一、やわらかな絆


「三成、幸村。私はお前たちの期待に、義と愛をもって応えよう。決して平坦な道のりではないが、義の世の為だ。」

「俺はお前たちの想いに報いよう。どれほど険しい道だろうが、俺は道を踏み外すようなへまはせん。」

「では私は、
 あなた方が己の道を突き進むことが出来るよう、お守り致します。突き進んだその先へ、どこまでもお供致しましょう。」

 小田原の桜が、ひらりひらりと舞っていた。











「幸村、お前ばかり言葉が多いぞ。」
「え、あ、すいません。つい熱が入ってしまい…、」
「私とてお前たちを愛しているぞ。」
「ええい男が気色の悪いことを言うな。」
 じゃれ出した兼続と三成だが、幸村は二人の様子を見てくすくすと笑った。幸村の笑い声に、二人は互いに掴んでいた手を離し顔を見合わせた。幸村につられるようにして兼続は大声で笑い、三成はきまりの悪そうな顔をしていた。ほんのり頬が赤いのは、幸村と兼続の秘密になるだろう。
(私は、この絆を生きよう。)
 戦前とは思えぬ、穏やかな日であった。