『これから、どうなりますか』
幸村が平坦な調子で訊ねた。平坦、と言うには語弊があったかもしれない。けれども、清正にはそう感じられた。彼の穏やかな声は、どういった内容の台詞を吐くにしても、いつだってその調子だからだ。ある種の無表情だ、と清正は思う。彼の感情の取り繕い方は、どこかちぐはぐなのだ。
清正は返答しなかった。嫌な時に嫌なことを訊くな、と思ったからだ。這わせていた手に少しだけ力を入れて、指の痕を残すように太腿を撫でた。幸村は反応を示さなかった。彼はいつだって、無駄なことを喋らない。こういった場面でもそうだ。決して声を漏らさず、けれども耐えるように、とも違う。喋らないことが、彼にとっては普通であったのかもしれない。
『お前は、変わらないな。あいつらがいなくなったというのに、』
『薄情でしょう。わたしも、そう思います』
息を詰めて、吐き出す。幸村からの反応は、精々そんなものだ。物足りないだとか、刺激が足りないとは思わなかった。清正自身、こういった行為に情緒を求めていないからだろうか。
『薄情、薄情か。そうかもしれないが、俺は、そうだな、羨ましいのかもしれん。いつまで経っても、過去に縋っている。縋ることしか出来ん。過去があまりに眩しすぎたせいだろうか』
くすくすと幸村が笑っている。噛み付くように彼の息を吸って、その声を封じた。快不快からではなく、そうする以外の手段を知らなかったからだ。
『これから、どうなりますか。どうなると、思いますか』
問い掛けている風ではなかった。彼はその答えを知っているのかもしれない。或いは、答えなど彼には必要ないのかもしれない。先の清正と同じだ。これを訊ねるしか、手段を知らないのだ。そのくせ、幸村自身はその答えに全くの無関心などとは、一体どうしてひどい矛盾ではないか。
『なれのはて』
うっかり清幸になりました。書こうと思ったら書けないのに、おかしいなあ。
12/06/10