慕情を抱く5つの言葉 TV様
01 できうるかぎりひっそりと、ひと知れずに散ってしまいたい。 兼続と幸村
02 心を仕舞っておける場所、提供してください。 兼幸
03 あなたが騙されたふりをしてくれれば、それだけで幸せ。 兼幸
04 運命だと、ほんとうにそう思いこんでいる愚か者だとでも言うの。 慶幸
05 本音は明日のお楽しみ。 政幸
01 できうるかぎりひっそりと、ひと知れずに散ってしまいたい。
今宵は満月だった。幸村は、折角ですから月見をしましょう!と兼続と三成に声を掛けた。このところ雑務で忙しかった為、息抜きにもいいだろうと、二人は酒を持って幸村にあてがわれている部屋へと向かった。幸村の部屋が一番月を見るにはいい場所にあるからだ。
酒が入ると、三成はすぐに酔っ払い潰れてしまう。今日は特に疲れていたようで、今では静かな寝息を立てている。二人はそれを見慣れた様子で一瞥し、顔を見合わせて小さく笑った。月は満月だったが、それはきっかけを与えただけでここでは大した意味を持ってはいなかった。
「謙信公ともよくお呑みになったのですか?」
幸村が昔のことを訊ねてくるのは非常に珍しいことだった。酔っているのだろうか。兼続はぼんやりと思った。
「ああ。幸村も信玄公と、あ、いや、すまない。」
「謝るようなことを言われましたか?」
幸村は顔に笑みを浮かべながら、ゆっくりと月を見上げた。兼続は言葉が見つからず、誤魔化すように酒を口に運んだ。
「笑っていようと思いました。この先何があろうとも、」
唐突に語りだした幸村の真意がわからず、兼続は幸村の横顔を見つめた。幸村は見上げていた視線を兼続に向けて、また緩やかに穏やかに微笑んだ。
「人はいつか死にます。それはとても悲しいことです。人の死に際と言うのは、それはそれは、とても悲しくて悔しくて叫びだしてしまうような思いになります。」
幸村はそしてまた月を見上げる。穏やかな表情の中に、一本決して曲がらないものを貫いている幸村の横顔は、兼続が一瞬手を伸ばすことすら忘れた程だった。
「だから、私は笑っていようと思います。悲しい悔しいと人の記憶に残るのではなく、いっそ間抜けな程たくさんの笑顔が私であると思われるような。突然に私が消えても、その認識が全てであればいいと、わたしはおもい、ます、……。」
語尾がゆっくりとなり、いきなり兼続の方に倒れこんできた。兼続の肩にもたれ掛かる幸村にびっくりして、兼続は首を少々強引に幸村の方へと向けた。兼続の心配をよそに幸村はすやすやと寝息を立てていた。兼続は安堵の息をついたが、この態勢の微妙さにも気付いて、今度は長く長くため息をついたのだった。
***
兼続書くの難しいね。
06/05/16
02 心を仕舞っておける場所、提供してください。
大阪城は落城寸前だった。それでも何とか持ちこたえているのは、火事場の馬鹿力、と言っては言葉が悪いが、まさにそれと同じようなものだった。これだけの抵抗がいつまでも続くわけがない。兼続は下知を飛ばした。真田丸を開門させる為だ。
幸村は案の定現れた。彼の顔は疲労しきっていたが、眼だけは闘志で輝いていた。戦場の彼はあの頃から何も変わっていなくて、喜んでいいのか、それとも悲しんでいいのかわからなかった。同時に、彼を思う自分の気持ちも何一つ変わっていなくて、いっそこの心がなかったのならば、彼に刀を向けることは容易いのだろうか、と思った。それは、間違いなく不義、だけれども。
***
幸村verの大阪城で。
06/05/16
03 あなたが騙されたふりをしてくれれば、それだけで幸せ。
「幸村ぁー!好きだぁぁーー!!」
偶然にもその場に居合わせてしまった慶次は、遠くからの大告白に、傾いてるねぇ!と笑うのも忘れて、ぶつけられた本人へと視線を向けてしまった。幸村はきょとんと兼続の言葉を聞いていたが、何かを思いついたように顔を輝かせて、こちらも負けず劣らずの大音量で、「私も好きですよ!」とお返事。この場に二人きり、まあ親しい仲という意味では慶次ぐらいは許容範囲内だろうが、周りには鍛錬をしている兵達がたくさんいて、なんとも痛々しかった。
「苦情言いに来たんですけど、それどころじゃないですね、これは。」
いつの間にか背後には左近が立っていて、目が合うと同時に苦笑した。大方三成が言った文句の代行に来たのだろう。けれど例の二人はというと、感極まった兼続は幸村に向かって走り出し、ぎゅうぎゅうと抱き締めているところだった。幸村はそこまでされているにも関わらず、まだ兼続の想いに気付いていないらしく、困ったなあと辺りに助けを求めていた。幸村が慶次たちに気付いてその眼を向けた。
(えっと、どうすればいいんですか?)
それは本当にそれだけの意味しか含んでいない眼だったから、二人は大袈裟にため息をついて、慶次に至っては肩をすくめて、その場を去ったのだった。
***
兼続のキャラがまだ掴めてない。
でもって今までで一番お題の意味を間違えてる。
06/05/16
04 運命だと、ほんとうにそう思いこんでいる愚か者だとでも言うの。
「上田に、帰ります。」
夕日に照らされて幸村が橙色に染まっていた。慶次は、そりゃまた急な話だな、と相槌を打った。
「見合いをさせられるみたいで。」
へぇ、と。慶次の眼が細められた。
「どうして俺に言うんだ幸村。」
もしこれが別れ話の入り口だったとしても、慶次の経験上こんなにも悪びれない態度の相手など初めてだった。
「慶次殿には言わなければいけないと思いましたので。」
そうかい。慶次はそう呟いたまま何も言わなかった。幸村も口を閉ざし、二人だけの空気に沈黙が流れる。雲までもを橙色に染めた夕日が沈もうとしていた。待て、と言いたくなってしまった。
「お断り、しますけどね。今の私は、一人で手一杯なので申し訳ありませんが、この見合いはなかったことにさせて頂きます、と丁寧に断りますよ。」
「それってもしかして、」
「慶次殿がいらっしゃれば、とりあえず今の私は退屈しませんから。」
幸村はそう言って、帰りますか、とにこりと笑った。
***
できあがってる感のある慶幸。あみだやってみたら慶次だったから、さ。
兼続は修行してから挑んでみます。
慶次相手だと歳相応になるといいな。逆にちょっと押し気味な感じな気がする。
とりあえず、色々時代無視なにおいがプンプンしますネ!
06/05/16
05 本音は明日のお楽しみ。
幸村はこっそりと且つ大胆にも政宗の陣へと訪れた。明日は総攻撃がかけられるという。間違いなく、大阪城は落ちるだろう。政宗は幸村を見つけてから、こうして向かい合って話している間に、何度も「馬鹿め!」と叫んでいた。幸村は「相変わらずですなあ。」と笑っていたが、政宗にしてみれば、幸村のわざとやっているのか素なのか分からない惚けっぷりの方が相変わらずだと思った。戦場の彼と、平時の彼とはどうも繋がりにくい。
幸村は特に何を話すでもなく、他愛もないことを喋って、そろそろ失礼致します、と腰を上げた。あっと政宗が声をこぼすと、幸村は何か?と振り返った。
「奥州に来い。」
幸村は少しだけ目を細めて、それから穏やかに微笑んだ。
「今、ここで返事をしなければいけませんか?一晩考えさせていただきたい。」
明日など大阪城は落ちてしまうではないか。それでは政宗の思いは叶わない。
「ゆきむら、」
「明日、」
「決意は揺るがぬか?」
「全ては明日、ですよ。全て明日になれば分かります。」
それはあまりにも幸村らしい、あまりにもあからさまな言い訳だったから、政宗は彼を止めることが出来なかった。自分らしく生きることが、何よりも幸村の一番の願いだったに違いないからだ。
***
前の話とデジャヴ。
大阪の陣がホント好きなんです。
これもあみだの結果。
伊達と幸村の共通点って、大阪の陣ぐらいしか思いつかない貧弱なボキャブラリー。
06/05/16