置き忘れた5つの願い Air.様
01.過ぎた日の幸い 武蔵と幸村
02.君の手のぬくもりが 武蔵と幸村
03.どうか終わらぬように 武蔵と幸村
04.願わないと決めた 三成と幸村
05.あなたがすきでした。 三幸
01.過ぎた日の幸い
穏やかに冷たさを運んできた風が、彼の髪を撫でると共に、武蔵の頬にも少しの心地よさを残して通り過ぎていった。
(風のような人だった。)
(時に厳しく、時に優しく。その隣に居ることが当然のことのように、そばに。)
(風のように、いなくなってしまった、けれど。)
幸村が縋ることを知らず、それなのに手を伸ばしてしまったから、風は悪戯にくるくると幸村と武蔵の間を踊ったのだった。
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大阪城好きすぎるので、何も考えずに書き出すと、武蔵との話になる。
06/05/18
02.君の手のぬくもりが
「 武蔵の手の温度は、三成殿や兼続殿たちに似ている気がする。でも、よくよく思い出そうとすると、全く似てないような気にもなってくる。まるで私は、武蔵の手のぬくもりしか知らないように、思えてくる。 」
幸村は、そして振り返りながらゆっくりと微笑んだ。彼の目の前では丁度城門が外から破られるところだった。戦場には全く似つかわしくない彼の表情に彼の不器用なまでの信念を見た気がした武蔵は、戦場の空気に当てられて早鐘を打つ心臓を落ち着かせるため、大きく息を吸い込んだのだった。
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キャラ掴めてないのに書こうとするから、こんな意味不明な話になるんだよ。
武蔵に対する幸村の口調って難しくないですか?
06/05/18
03.どうか終わらぬように
幸村はどこから拾ってきたのだろうか、痩せ細った子犬と戯れていた。そんな幸村をぽかんと眺めていた武蔵の視線に気付いたのだろう、幸村は武蔵の名を呼び、こっちへこい、と手招きをした。
「幸村。もうすぐ戦が始まるぜ。」
「分かっている。」
「どうすんだ、その犬。」
幸村は誤魔化すように微笑んで、きっと死んでしまうだろうな、と犬の頭を撫でながら言った。その声はむしろ、そのことを仕方がないことだ、としか受け止められない世の無情を悲しんでいるようだった。
「戦は、人の感情を奪う。人の思考を奪う。だから思うのだ。この刹那がいつまでも続けばいい、と。無理だとわかっているからこそ、そう、思うのだ。」
幸村はもう一度子犬の頭を撫でて、さあもう行け、と手を離した。子犬は何も知らない瞳を幸村に向けたが、その時、戦が始まる合図が響き渡り、幸村の眼には子犬の姿など入らなくなってしまった。
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別に武蔵にする必要はないよね、って思いました。や、大阪城がいいんだよ。幸村死ぬのに、あいつ戦始まる直前まで犬と遊んでたんだぜ、っていうね、そういうわけわかんない妄想がね、うん。
06/05/18
04.願わないと決めた
「叶わないその時は、あまりに苦しいので、私は何も願いません。」
幸村は見つめてくる三成の視線に、凛とそう言い放った。けれども三成は幸村から視線を外さない。
「言葉にしなければ、私の願いも思いも、全て夢まぼろしのように、いつかは消えてしまうのではないかと思うのです。」
「それは、とても悲しいことです。けれど、忘れることすら出来ないよりは、いっそのこと、何もかもを消してしまった方がよいのでは、と思う時もあります。」
(すいませんすいません。私はもう二度と大切なものは作らないと誓ったはずなのに、私はあなたに願いを強要している気がするのです。)
幸村は苦笑して、微笑んで、少しだけ、泣いた。
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幸村は仲間と呼べる人がたくさんいるのに、その人たちとの別れがあまりにも多すぎるなあと思いました。
06/05/18
05.あなたがすきでした。
繋いだ手は熱く、
交わす言葉もまた熱く、
からかうように頬を撫でていく風ですら、熱く熱く。
笑い声がもれる。ゆっくりと、けれども段々と大きく。
一面の緑たちと共に笑う彼を、世界中で何よりも愛しいと感じた。
「 ゆ き む ら 。 」
喉は乾いていて思うように声が出なかった。振り返った幸村の笑顔が眩しくて、三成の身体から残り少ない水分がこぼれていくような錯覚に陥った。
大切な言葉は、いつかの大切な日のためにとっておこうと思った。だって今日はあまりにも暑くて、彼に思いも言葉も、何一つとして伝えられそうになかったからだ。
人々の喧騒の熱気に、三成はふと暑い熱いあの日のことを思い出した。あの日あの時、きっと自分は汗と共にこの言葉を、あの場所へと置き忘れてしまったのだ。
(あなたがすきでした。)
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06/05/18