槍を振るうその横顔に、呼吸が止まった。突く吼える、吼えながら突いて薙いで払って、付着した血も構わず、繰り返し、繰り返し。その動きは、さながら修羅か阿修羅のよう。されど、その顔に浮かぶ表情は、静かに燃える蒼い炎のようだった。怒りも憎しみも、恨み辛み妬みに嫉み、全ての負の感情を殺した、その全てを呑み込んだ表情をしていた。
幸村が振り返る、そして、笑った。平時と同じ、穏やかな微笑だ。ぞくり、と何かが背筋を通り抜けて、ああ自分は一心不乱に戦場を駆ける彼に恐怖していたのだと思った。
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書きたくなったから書いた、以外の何ものでもない。
06/06/11