あなたへ贈るちっぽけな言葉 snivelly様 三成と幸村
生まれてきてくれて、ありがとう
一生、ずっと、永遠に、愛してる
幸せなんかいらないから
貴方でいい。貴方がいい。
私が死んだら泣いてください。
置いていかないで、連れていって
手、繋ごう。
貴方の優しさが哀しいほど痛い
泣いていいんだよ
明日も晴れますように
一緒に居たい。それだけ。
苦しいと思って何が悪い。
お前を想うことは、こんなにも苦しいくせして、何よりも優しい。
俺たちは、すぐにでも消えてしまいそうな恋をしているのだ。
生まれてきてくれて、ありがとう
「言葉は稚拙だ。こんなものに囚われてたまるかと、俺は常々思っている。」
一陣の風が吹いた。幸村は思わずその風の行く先を見つめようと目を細めたが、三成が幸村の意識を散らさないようにと幸村の名を呼んだものだから、幸村はその遠いどこかを眺めたような眸のまま、三成を見やった。
「お前が、もし、あの長篠の戦いを後悔しているのであれば、俺のこの台詞は、お前の全てを否定した言葉かもしれん。」
三成どの、と幸村が唇を動かした。お前はそうして、いつまでもいつまでも、無知なふりをして傷付かないふりをして、お前はそうして、いつまでもいつまでも、自分を蔑み続けるのだろう。
「お前がここでこうして生きていることが、俺は何よりも嬉しい。この温かな体温も、稚拙すぎる言葉も、何もかもがだ。」
幸村は、泣けもしないくせに泣いたようにくしゃりと顔を歪めて、そして、困ったような諦めたような表情で笑うのだった。
***
06/06/26
一生、ずっと、永遠に、愛してる
一生とか永遠とか、たとえそれが存在したとしても、目に見えぬだろう世界を表しているとしか思えない三成にとって、どうも浮いた言葉だった。
それでも、彼を思うこの想いだけは、何故だかこの言葉以外にしっくりと来るものがない気がした。誰かを想うということは、たくさんの矛盾と、その矛盾に苛立つでもなく、当惑することすらなく、何故だか共存することを自然と成し得ている気さえする。
「誰かが声にしてしまった言葉など、すぐに消えてしまいます。私は、私が願うような、永遠などという言葉の意味を信じてはいませんが、それでも、」
愛などと語りはしないが。三成は、目の前の男が、自分の想いを澱みなく、言葉では表せぬ部分まで理解しているような気がして、頭がくらくらしそうだった。
「三成どのの永遠は、きっと何よりも優しいのでしょうね。私は、そんなあなたの言葉を、大切に大切に、これからを生きていくのでしょう。」
***
きっと、一番言葉に振り回されてるのはみっちゃんではなかろうか、と。
06/06/26
幸せなんからないから
ただ、お前達と共に歩む時が、一刻でも長く続いたら、と。
「左近。お前の命を俺にくれるか。」
「下手な殿は殿じゃありませんよ。さっさと戦線に出て敵を一人残らず倒して来い、ぐらいのご下知が欲しかったですねぇ。」
「俺は逃げる。生き延びるために。左近は、」
「左近はここで討ち死に致しますよ。どうせ、この機会を逃せば、戦で死ぬことは叶わないだろうし。俺は、少々長く生きすぎたようで。」
そうか、と三成が感情を隠して頷く。
「生きて、くださいよ。左近にはこの世に未練などありはしませんが、ただ一つ挙げるとしたら、殿のあまりにも不器用な生き方でしょうかね。どうか、幸せだと思える素直さを持ってくださいよ。」
死というものと対面すると思う。幸せなどと贅沢は言わぬ。いつまでもいつまでも、生きている限り、などとは決して言わぬ。ただ、一刻でも長く長く、彼らとの時が続いたら、と。
あの日、この時は永遠に続くのではないかと思わせた程の穏やかなあたたかなときを、
***
関ヶ原、です。
言っときますが、うちの石田主従は、あくまでコンビです。
06/06/26
貴方でいい。貴方がいい。
「ああもう、お前でいい。相談に乗れ。」
三成はそう言うなり、部屋の主に断ることなく、さも自分がこの部屋の持ち主であるかのように、それはそれは堂々と部屋の真ん真ん中にどかりと座り込んだ。兼続は走らせていた筆を止めて、思わず苦笑を彼に送る。
「なんだ、まだ幸村にいらんことを言ったのか。いい加減にせぬと、幸村が愛想を尽かしてしまうぞ。」
「そうならない方法をお前に聞きに来たのだろうが!ええい理由がわかっているのならばさっさと解決策を言え!」
売り言葉に買い言葉。三成の姿勢に兼続も便乗して、二人して身を乗り出すように自分の言い分を喚きだす。外にだだ漏れの状態だ。
「あの〜お取り込み中失礼します。」
ひょこりと、障子の影から幸村が顔を出す。三成はあからさまに気まずそうな表情をして顔を背けたが、兼続はよく来てくれた!と満面の笑みだ。
「幸村聞いてくれ、この男ときたら、」
「三成殿、」
兼続と幸村の声が重なる。当然のように幸村は身を引いて、何ですか?と続きを催促したが、今の状況に気付いた兼続は、今は三成に不利な情報を与えるべきではない!と義が判断したものだから、何でもない、三成に用があるのだろう?と白々しい台詞を吐く。
「そうなんです。三成殿、どうやら左近殿が午後からお時間が出来るそうなので、町へは左近殿と行かれては、」
「うそだ!」
「はい?」
「お前でいいなどとはうそだ!お前がいいのだ!何が嬉しくて、左近と団子を食べに行かねばならん!」
***
短くしたかったのに、見事に15行以上になりました。
兼続は生温く三成を応援してやってれば、いいのではないかと。それはもう、投げやりな感じで(そんなの愛と義の戦士じゃない!)
06/06/27
私が死んだら泣いてください
「勝機があると、お思いですか、」
幸村の、縋るような声に、三成はようやく振り返った。
「死に行くようなものです、あなたはそうして、豊臣を潰さんとする家康の目論見に、まんまと乗せられてしまっただけです、」
三成は幸村の言葉には答えず、ただ彼の名を呼んだ。あまりにも穏やかな声に、幸村は衝動的に顔を背けた。
「戦はおそらく野戦となろう。なれば、ぶつかって初めて見えてくる勝機もあるだろう。悲観するものではない。
ただ、」
三成は薄っすらと笑った。世界を彩る橙色があまりにも鮮やか過ぎて、三成の笑みがかすれてしまう。まってください、まってください、幸村の声は届かない。
「俺が死んだその時は、弔いもいらん、喪に服する必要もない、ただ、お前の涙が欲しい。」
「…泣きません。泣けません。」
三成は、知っている、と笑う。幸村は、こんなにも優しい人の為にこそ、泣き叫んでその死を悼みたいと思ったが、きっときっと、この人はその優しさを裏切ってでも死んでしまうのだろうと、幸村は顔を伏せたのだった。
***
ひどい話だ。(困ったことに、コメントが浮かばない)
06/06/28
置いていかないで、連れていって
「私も、お供します。」
「いや、お前は上田に帰れ。」
「父が居ります。負けるようなことは万に一つとしてありません。」
「お前は俺がふがいないと、頼りにならぬと、そう言いたいのか。」
「違います!」
違います、と幸村は繰り返して、顔を伏せた。
あなたは、ずるいです。どうしてそんなにも生き急ぐのですか。その生き急いだ最後に、どうして私をご一緒させてはくれないのですか。
「ずるい、です、あなたの生き方は、とても、ずるい、です。」
幸村は最後の祈りを捧げるように、三成の着物に縋ったが、三成は、自分の死と幸村の生の重さの平等さに気付かず、まるで全てを理解しているような眸で、幸村の手に己のそれを重ねたのだった。
(この人には通じないのだ、自分の想いも理想も、根底にうずくまっている願望も、なにもかも、)
(やさしすぎる、人だから。時代を間違えて生まれてきてしまった、あまりにも盲目なやさしさだから。)
***
三←幸、にはなってない、かな、、
この時代の人のカッコいいところは、何回も言いますけど、誇りをもって死に場所へと赴けるところだと思います。堂々と前を向いて、死ぬために、戦へと行ってしまえるカッコ良さと、残された人の、その誇りを尊重した姿勢がすごく好きです。
06/06/29
手、繋ごう。
穏やかな日だった。確かに少々気温が高く、少し歩いただけで汗が額に浮き出てきたが、それでも三成は、穏やかないい日だったと思う。
町へ出た帰り道、行き来の多い通りを避けて、まだ春の陽気が残っているような土手を歩いていた。三成が半歩前に出たような形で、幸村の斜め前を歩く。幸村は目に飛び込んでくる、些細ながらも美しき景色に一々足を止めるものだから、三成は常に背後の気配に気をつけなければならなかった。
また、幸村が立ち止まっている。三成は振り返って、幸村を見る。幸村は三成に背を向けて、川と空との境目に夕日が沈んでいくさまを見つめていた。まるで川の水に溶けていくように、水面に夕日の色が映る。吸い寄せられるように、三成は幸村の隣に立った。
「手を、繋ぎませんか?」
幸村はそう言って、微笑みながら三成に手を差し出す。その横顔は夕日の色を反射させていて、思わず目を細めた。眩しいのだ。
「あ、いやですよね、男同士でするようなことでは、」
引っ込めようとしたその手を、まるで奪うかのような強引さで、三成は幸村の手を握った。
(まめだらけだ、お前の掌は。)
まめをつくって出来て潰れて、それでもまたまめをつくって。幸村はそうして己を鍛えてきたのだろう。
「幸村。」
「はい。」
「太平の世がきたら、団子屋をやらぬか?」
突然の三成の言葉に、幸村はきょとんとしていたが、ふと深く考える前に、それもいいだろうなあと思ったものだから、はいよろしくお願いします、と笑った。
(理由などない。ただ、この掌の努力を目の当たりにして、ふと、ふと浮かんだだけだ。この男は戦をする為だけに槍を振るってきたのだろうが、それでは駄目だと思った結果に過ぎないのだ。)
***
よく、分からない話、だと、思います。
どうして団子屋さんにしたのか、自分でも分からない、です。
06/06/29
貴方の優しさが哀しいほど痛い
「みつなりどの。」
目の前の男は微笑みながら、何食わぬ顔で傷を押さえて、今この瞬間の張り詰められた空気に気付いていないふりをして、
「みつなりどの。」
繰り返し繰り返し、俺を励ますため苦しませるために、俺の名を呼び続けるのだ。
***
ニュアンスで読んで!
06/06/29
泣いていいんだよ
きつくきつく握り締められたこぶし。この人は私の血塗られた鎧に手を添えて、(縋るように、と言ってしまうのは、この人への侮辱になってしまうけれど)、眉を寄せて、ただ一度だけ、私の心の奥深くが動揺するような、悲しそうな声で叫ぶのだ。
「ゆきむら。」
(ああ、あなたの手が汚れてしまいます。衣が汚れてしまいます。たくさんの血で染まった私に触れては、あなたにも赤い赤い血がべっとりとついて、取れなくなってしまいます。)
私は、悲痛なまでに想いを悟らせる、あなたの言葉に応えられる自信がないのです。
***
上のと対な感じで。
って書きたかったのに、対になってないよ、っていう、ネ!
06/06/29
明日も晴れますように
会話が途切れることを見越していたように、その風は二人の間の空気をかき回していった。三成は、二人の間に沈殿している空気の層をぐちゃぐちゃにしていっただけでは気のすまなかったらしい、悪戯な風に吹かれた髪を押さえつける。
「明日も、この天気が続けばいいですね。」
幸村が虚空を見つめたまま笑う。三成はその横顔を、目を細めて見つめた。眩しいと、感じた。あまりにも鮮やかに輝いていて、とても直視できるものではない。
(幸村はそうやって、一日が終わる度に、永久に続いていく、明日という言葉に込められた永遠を願うのだ。)
三成は、幸村の笑顔と、その笑顔から遠ざかってしまった、あまりにも尊すぎる願いに、思わず目を細めたのだ。
***
明日っていう日はずっと来ないだろうな、と今でも思っていますので。明日という言葉は、一番近い、永遠にやってこない未来ではなかろうか、と。どうせ言葉遊びですが。
06/07/01
一緒に居たい。それだけ。
ふと思うのです。私がその時何を思っていたのか、あなたが何を考えていたのか、そんなことは、きっと関係がないのだと、思うのです。ただ、共に過ごしたというその事実の尊さが、私の全てになっていくのではないか、と、私は思うのです。
ですから、そのように必死に会話を繋がないでください。沈黙を嫌わないでください。私は、いつか、何かの拍子に過去を振り返ったその時、あなたと過ごした今この瞬間のことを想っては、救いとは違いますが、それに近い安心を得ているのではないでしょうか。
ですから、どうか、共に過ごすことの出来る今という尊さを、私に抱かせてください。
***
うちの幸村は、そこまで過去を悲観しているわけじゃないのでは?と思ったので。割り切ることを知ってるという意味では、義トリオの中で一番大人かな、と。
尊いって言葉が無性に使いたかったんです、よ。
06/07/01