初々しい二人で5題 age様 三幸
1.手を繋ぐのもどきどきで
2.見つめあったら照れちゃうわ
3.キスは片手で数える程度
4.名前で呼び合うのも照れるのに
5.もっと、甘えて欲しい
1.手を繋ぐのもどきどきで
「島左近隊、敗走。」
伝令の告げた言葉に、本陣に詰めていた者の動きが止まった。伝令兵は目の前にいる三成に低く低く頭を下げている。まるで自分が叱られでもするかのようだが、事態を飲み込んだら、おそらくは伝令兵に怒号を浴びせるのだろう。
三成は案の定、怒りをあらわに伝令兵を見下ろした。が、どうにか怒号を飲み込んだようで、わざとらしく舌うちをして扇を放り投げただけだった。
「左近の援護へと向かう。馬をひけ!」
「三成!本隊を動かすのはまずい。ここは私が、」
「この時間すら惜しい!俺は出陣するぞ!」
何とかとどめようとする兼続などよそに、三成は放り投げた鉄扇を面倒くさそうに拾い上げて、一度だけ開閉させた。
「せめて冷静になれ三成!左近の隊に二倍の戦力をあてたのは、明らかにお前の動揺を誘ったものだ!ここでお前が出ては、敵の思う壺だ!」
「それぐらい分かっている!だが、このように見下されたままでは、俺の意地がおさまりきらん!」
尚も説得しようと言葉を続ける兼続に、くどい!と振り返りもせず叫んだところだった。ぐい、と手が引かれる。三成はその手を振り解こうと大きく手を振り上げた時、
「みつなりどの。」
と。戦の熱に浮かされた頭を冷やしてくれるような、静かな声だった。
「幸村、」
「どうか落ち着いてください。左近殿の援護には私が向かいますので、三成殿は本陣にて、戦の流れに気を配っていてください。」
お願いします、と、更に手を握られて、頷くしかない三成だった。
***
あれ、なんかお題と違くない…?(致命的)
ていうか、可愛さの欠片もないネ!
06/07/10
2.見つめあったら照れちゃうわ
ふと、会話が途切れた。三成はその先をどうにか紡ごうと虚空を見上げたが、そこに何かがあるわけもなく、仕方がなく隣に座っている幸村へと視線を戻した。三成のしかめっ面をした視線に気付いた幸村は、三成の内心を見透かしているようにくすくすと笑った。三成は自分が笑われているにも関わらず、何故だか無性にこの時間を愛おしく思った。風に乗せるように静かな声で
「ゆきむら」
と名を呼ぶと、幸村は笑った。何かを思って声を掛けたのではないと悟っているからだ。言葉にできない想いの欠片が、名を呼ぶという行為に染み出てしまったに過ぎない。三成は今この瞬間だけは、言葉など用いなくとも全てを共有できているように感じ、まるでそうなるのが正しいとでも言うように、自然に幸村の頬へと手を伸ばしたのだった。
***
この後の話がホントは書きたかったはずなのに、表現の仕方に迷ってやめました。
前も同じような話あったよね?なんて言われなくても書いた本人が一番わかってる(開き直り/でも何回だって書きたいんだもの、仕方ない)
06/07/16
3.キスは片手で数える程度
三成と幸村の間に割って入ってきた扇子は、先刻三成が幸村に与えたものだった。幸村は申し訳なさそうに扇子の隙間から三成の様子を伺った。今の今まで口付け合っていたのに、この仕打ちはひどいだろう、と三成は思ったが、着物の合わせ目からちらりと覗いている首筋が、赤く染まっていたものだから、三成の頬も彼の首筋と同じぐらい赤くなっていくのを感じた。
三成が何も言わずいると、流石に罪悪感を感じたのか、幸村が細々とした声を出した。
「あの、こ、こ、廊下、ですし、」
「まだ、昼、ですし、」
「だから、あの、す、すいません。」
あなたにされている行為が嫌だったのではなく、あなたにされているという事実が、どうしようもなく恥ずかしかったのです。
幸村はそう言うと、扇子の手を動かさないまま、もう一度すいませんと顔を伏せた。三成は、目の前で二人を隔てる扇子の薄い分厚さに理不尽な怒りを覚え、いっそのことこんなものあげなければよかった、とすら思ったが、幸村のこの行動にどうしようもない愛しさを感じた三成は、ああもうどうでもいいや、と幸村を引き寄せたのだった。
***
前振りを一切はぶいたら、意味わかんない話になったよ、っていう。女体化で考えてたネタだから、かなり女々しいことしてますね、幸ちゃん。
06/07/18
4.名前で呼び合うのも照れるのに
「幸村」
と声を出すその一瞬前に、幸村は三成に気付いて振り返った。だから、口が"ゆきむら"のまま固まってしまった。
幸村はいつものようににこりと笑って、そう大して近くもない距離を詰めようと歩き出した。幸村が口を開く。三成は、ああきっと彼は自分の名を呼ぼうとしているのだろうなあと感じ、彼が声を出す前に、固まってしまっていた口で、返事の変わりに
「ゆきむら」
と呟いた。呟いてから、まるで自分達は声に出さずとも、相手と繋がっていられるような錯覚を感じた。三成は、その考えに、嬉しいながらもどこか羞恥を覚えて、ほのかに頬を赤くした。幸村がそんな三成の心情を読み取れたのか定かではないが、幸村の方も負けじと頬を染めて、余裕のない声で「みつなりどのっ」と呼んだのだった。
***
頑張ってお題に沿おうとした結果がこれ。
文がぐだぐだしてるのは、眠いのと書きたいのとを天秤にかけた結果、書きたい方が勝ったにも関わらず、じわじわと眠気に引っ張られてるからです。
慶幸も書きたかったのに、残念…!眠い。
06/07/20
5.もっと、甘えて欲しい
廊下の端へ消えていった姿に、兼続は咄嗟にその名を呼んだ。名前の主は足を止めて、廊下の端から顔を出した。機嫌が悪そうな顔は、実は地なのだと知っている兼続は、気にした様子もなく歩み寄る。
「今からそちらへと向かうところだったのだが、好都合だ。」
「俺はこれからしばらく休憩する。後にしてくれ。」
そう短く言って、くるりと踵を返す三成。兼続は待った!とその腕を掴む。
「幸村のところへ行くのだろう。私も共に行こう。」
三成は何故分かった、と兼続を見た。兼続は本当に分かりやすい奴だ、と笑った。一歩下がって見れば、これほどからかって楽しい人間も珍しいだろう。
「今のお前の様子は明らかに疲れているからな。幸村の笑顔を見て癒されたいとでも考えているのだろう。この前など、四半刻居座るつもりが、二刻も幸村の膝枕で眠っていただろう。まあ、気持ちは分からんでもない。」
何故知っている!と三成は声を荒げたが、兼続はどこ吹く風と涼しい顔をしている。
「だが、あまり自分を押し付け過ぎるなよ。」
兼続の声の調子が変わった。冷たさも鋭さもなかったが、それを超えるだけの冷静さがあった。
三成は兼続に飲まれないように、と少々警戒しながら、どういう意味だ、とぶっきらぼうに訊ねた。
「お前は見かけに寄らず熱い男だ。幸村はああ見えて、時々ひどく冷めたことを言う。いや、諦めている、と言うのか、身を引いた考え方、とでも言うのだろうか。」
「今更そんなことを言われずとも、重々分かっているつもりだ。」
そうか?と兼続は笑ったが、眸は真剣そのものだった。三成が幸村を大切にしたいと願うように、兼続も幸村のこととの関係を壊したくはないと祈っているのだろう。
「あまり、幸村に甘えすぎるなよ。
お前は、幸村との温度差に、いつか心の臓が悲鳴をあげて死んでしまうかもしれないぞ。」
***
うちのかねっつとみっちゃんは、どうやら微妙な距離感をもっているようです(言いたいことはそれだけか)
06/07/23