ただその想いは深く深く、


「あたし達はね、幸村様を護るために存在してるの。幸村様の願いを叶える為、幸村様の信念を貫く手伝いをする為、あたし達は命をかけてるの。」

くのいちは振り返って笑った。武蔵はその笑顔が紛れもない人の感情を持ったものだと知っているから、彼女の言葉の続きを無言で促した。

「あたし達の願いは幸村様なの。幸村様の願いの為に、あたし達は汗流すのも血流すのも厭わないし、それが当然のことだって思ってる。」

にゃは、理解できないって顔。くのいちはそう顔に笑みを貼り付けて、武蔵を指差した。そんな間抜け面で幸村様落としちゃうんだから、世の中理不尽だよねぇ〜。くのいちは更に声を上げて笑った。武蔵は、彼女が本当に笑っているとは思えなくて、ぶすりとした顔で、それがどうしたんだよ、と続きを催促する。

「でもね、でも、幸村様の願いがあたし達になることはない。幸村様はあたし達を本当に大切に想ってくれてるけど、でもね、あたし達が幸村様の生きる理由にはならないの。」

「あたし達にとってはそれが当然であって、全然哀しくないけどね。あの人の絶望を一番近くで見てたからね、時々すごく苦しくなるの。あたし達の中の誰か一人でもいい、あの人の願いになれれば、それが幸村様の希望になれるのにな、って。」

「だから、こんなこと言うの、ホント癪だけど。幸村様のこと、頼んだからね。あんたは、幸村様の最後の大切な人になってよ。」

その時、強い風が吹いた。武蔵は思わず目を閉じた。ざわざわと、木々が鳴る。たくさんの気配を感じた。きっと幸村を常に見守っている十勇士の気配だ。
武蔵が目を開けた時には、そこには何もなかったけれど。





***
私の中では十勇士と幸村はこんな感じ。持ちつ持たれつなんだけど、それで全てを説明できるわけじゃない、みたいな。ちなみに、くのいちがあたし達って言ってるのは、十勇士のことも含んでるからです。
06/07/24