っていう話が読みたい。 左幸編
1 ※女体化
2 ※女体化
「左近、話というのは何だ?兼続も居るではないか。余程重要なことか?」
三成は正面に座る左近を、訝しげに見る。三成の隣りには兼続も座っている。もしや?と思う節でもあるのか、三成よりは悠然とした構えだ。そして二人の正面に座っている左近の背後には、この場を見守るように幸村の姿もあった。
左近がゆっくりと頭を下げた。主である三成ならばまだしも、兼続にまで深々と頭を垂れる必要ない。
「幸村を、左近にくだされ。」
左近は手をついた姿勢でそう言った。三成は言葉の真意が読み取れなかったのか呆けていたが、兼続はほぅ、と感心したような息をついて、背後に控えている幸村を見た。幸村は己に声をかけられることを拒んでいるような、凛とした空気を纏っていた。背筋を伸ばし、ただ前を真っ直ぐに見つめている。
「さこん、お前は今なんと、」
繰り返そうとする左近を、ええいそのままでは声が聞き取りにくいわ!と面を上げるように言いつける。
顔を上げた左近は、まず三成を見据え、その次に兼続を見た。一つの決意をした、動ぜぬ表情をしていた。
「幸村を、正室に迎えたいと思います。」
***
っていう話。義トリオは義の誓いをしてたんで、やっぱり言っとかないと、っていう左近の誠意。多分昌幸殿には既に了承貰ってるんだろうな、と。左近は何となく信幸殿とは仲が悪そう。
06/11/09
※時間軸を同時にしたかったので、兼続・幸村サイドを赤で、三成・左近サイドを青で表示させてます。
左近は大量に押し付けられた仕事を届けに、三成の部屋へと来ていた。届けた分と同じぐらいの仕事を更に貰うはめになったのだが、書類を抱えた左近が退室しようと頭を下げれば、三成は不機嫌そうな顔で、そこに座れ、と扇で示した。
兼続は幸村の部屋を訪ねて、挨拶もそこそこに黙り込んでしまった。幸村はこの沈黙に何を答えればいいのか分からず、正面に座っている兼続を、ただ見つめるしかない。
兼続は大きくため息をついた。幸村はそのため息の理由がわからず、首を傾げた。
「お前は本当に左近でいいのか?」
「幸村とお前のことだ、俺がとやかく言うつもりはない。だか、お前とはそのことについて、話を聞いておきたい。」
あの件から、まるで嫌がらせのように大量の仕事を押し付けられていた左近は、いつかはこういった流れになるだろうことは覚悟していた。三成は幸村に甘い。だからこそ、幸村の幸せを願うのは当然のことであろう。
「まず、訊く。お前と幸村は本当に想い合っているのか。」
「仰る意味が、よく分からないのですが?」
「お前は左近と一緒になって、幸せになれるのかと訊いているのだ。」
兼続は言って、幸村の手を握った。嘘をつく人間というのは、どうやら手の先から冷たくなっていくらしい。幸村の言葉に嘘偽りがあるとは思えなかったが、それは本人が自覚していないだけかもしれないのだ。兼続があまりにも真剣に己を見詰めてくるものだから、幸村は困ったように少しだけはにかんだ。
「それは、一緒になってみないと分かりませんよ。好いた方と一緒になれたからと言って、幸せになれる保証などどこにありましょう。」
「しかしお前は、」
「確かに幸村はお人よしですが、好きでもない男と婚姻など結べはしないでしょう。」
そうか、と三成は短く相槌を打っただけだった。そのようなことは、本来なれば三成が問いただすべき問題ではない。むしろ、こうした会話そのものが野暮であったのかもしれない。
「幸村は子が産めぬと聞いた。その事が幸村を苦しめるのではないか?お前には、子々孫々、俺の家を支えて欲しい。お前にも子がいなければ俺が困る。そういったことは幸村の方がわきまえているだろう。」
左近は思わず三成の顔を見つめてしまった。正直、反対ばかりされると思っていたのだ。それが、この主は主なりに、自分達の幸せについて考えていたのだ。本当に殿はいい人なのになあ。周りにそれが伝わりにくいからなあ。勿体無い、と左近は思う。
「幸村は自分を責める傾向が顕著だ。そんなものは側室なり養子なりでどうにかすればいい話だが、幸村はそうしなければならない状況を作ってしまったと苦しむのではないか?」
「幸村は左近の子が産めぬだろう。今は愛し合った者同士一緒になれることで喜びはするだろう。私もそれを祝福したい。だが、幸村。その事実がいつかお前達を不幸にするのではないか、と。私は心配なのだ。」
ぎゅ、と強く手が握られた。幸村は、自分達はこんなにも優しい人に想われてなんと幸福者だろうと思った。自分達はなんとあたたかい人達に囲まれて生きているのだろう、と思うと無性に泣いて感謝したかった。
「兼続殿。確かに私は子が成せません。されど、それは何も今の問題ではありません。私は、」
わたしは、と幸村はゆっくりと繰り返して、短く息をついた。
「幸村は強い。あの御仁はこう言ってましたよ。」
「私は、今という時を生きているのです。今、この瞬間の幸せを想って生きていきたいのです。」
「過去を振り返りながら生きるのでもなく、手の届かない程のこれからに囚われながら生きるのではなく、ただ今を生きたい。」
「ですから、俺は、今幸村と共に生きることを真剣に考えていきたいと思います。」
それでは失礼。と左近が腰を上げ、脇に置いていた書類の束を持ち上げた。気合で今日中には終わらせますよ、と障子を開ける。ちらりと三成を振り返ってみると、左近には既に背を向けていた。この人とは長い意地の張り合いになりそうだ、と思ってさっさと退室しようとしたのだが、不機嫌そうな三成の声をそれを止めた。
「半分は置いておけ。どうせ俺のは八つ当たりだからな。幸村が選んだ幸せなれば、俺がどうこう言っても始まらん。」
思わず呆けた表情で三成の背を見てしまった左近だが、まるで照れているのを隠したような、わざとらしい不機嫌そうな声で、さっさと部屋へ戻れ!と叱責されてしまったから、左近はそのまますごすごと部屋へと戻って行った。
じっと、見つめあいが続いた。兼続は幸村の眸から視線を外さない。幸村もただ真っ直ぐに兼続を見つめる。が、兼続はしばしの沈黙の後、表情を弛緩させて、大口を開けて笑った。
「うむ!いい眸をしているな幸村!私はお前の強い意志をともした瞳が好きだよ。」
兼続は言いながら、ようやく手を離した。そして、もう一度幸村を見てにんまりとしてから、腰を上げた。
「正直な話、お前達の話だからな、私が何を言っても仕方がないと思うのだが、中々いい覚悟だ、幸村。」
はい、ありがとうございます。幸村は微笑むが、兼続は先程と同じ表情でけろりと言ってのけた。
「しかしだな、幸村。左近の仕打ちに少しでも不義を感じたらいつでも私のところへ来るといい。私がお前を娶ってあげよう。」
爽やかにそう言い放った兼続は、満足した様子で、さっさと部屋から去って行ったのだった。
***
っていう話!
どうしても同時進行で、漫画っぽい感じの表現の仕方にしたかったんですが、逆に見難いよ、っていう。
色々こういうのがいいな、っていうのを詰め込んだら、なんだか無駄に長くなりました。でもって混沌。
06/11/12