狂犬五題  リライト様  風幸


デンジャラス・ライフ
従うのは彼にだけ
Bow wow!!
噛み跡にキスを
どこまでもいっしょ、






























デンジャラス・ライフ


突然ふってわいた気配に、幸村はむしろ微笑んで迎えた。流石に首筋に刃物の感触はなかったが、それでも刺すような視線が幸村の背中を貫く。
「どこの手の者だ。」
「我に主なし。」
幸村が小さく笑ったのが影にも分かった。幸村は顔に笑みを浮かべながら振り返る。
「どうした、私を殺しに来たのだろう?」
まるで挑発するような台詞だが、声は至って穏やかだ。
「我は貴様を壊しに参った。だが、やめた。」
何故?と幸村は微笑む。影はその笑顔の裏に潜んでいる感情に、ひどく高揚した。
「抵抗の一つもせぬ者を壊しても面白くもなんともない。それに、貴様は既に壊れている。」
ほぅ、っと幸村の笑みが細まる。彼は冷ややかに笑った。その笑みの翳りこそ、影の好む混沌だった。
「それならば、お前はどうする?ここでむざむざ殺されるか?それとも、」
幸村の言葉に、今までなりを潜めていた、幸村配下の忍び達が一斉に殺気を放った。気をあらわにしたせいで居場所や数は知られてしまったが、今更関係ない。囲まれているのだ。
「私と共に来ないか?」
殺気がやんだ、と同時に、天井裏から、忍びらしくない感情を露にした声が飛び交った。一人が天井裏から顔を出し、幸村へと抗議をする。
「ちょっとちょっと幸村様!そんな危険なヤツあてにしなくたって、あたしたちがいるでしょ!才蔵が入った時はどうなることかって思ったけど、こいつなんかそれ以上に危険じゃん!いつ寝首掻かれるか分かったもんじゃ、」
「いいだろう、その遊びに付き合ってやろう。」
「ではよろしく頼む。しばらくはこの部屋を使ってくれ。私と共同になるが。」
「仕方ない、我慢しよう。」

くのいちがああもう!と叫ぶのも聞かず、幸村は満足そうに笑うものだから、天井裏に常に張り付いている真田の忍びたちも、まったく困ったものだ、と肩をすくめるのだった。

「だが、今日は布団が一枚しかないからな。よし、少し狭いが入ってくれ。」

流石にその台詞は、真田の忍びが、己の血と涙で培ってきた技術で阻止したけれども。





***
え、これ風魔? コタの口調がいまいち分かってないよ、っていう。きっとくのいちがめっちゃ出張ると思います。幸村は爽やかに天然なら、風魔は、あれ?もしかしてこいつ天然?みたいな感じ(分かりにくいヨ)
幸村は結構、色んな人に声をかけるんじゃないかと。才蔵とか勝手に設定作っちゃいましたけど、どっかでそういう設定の話があった気がするので。十勇士とか出し始めたら、楽しいだろうなあ(今はそこまで手が回りませんが)
きっと、今までで一番明るい話になってる、気がする。気がするだけ、かな。
06/07/02






























従うのは彼にだけ


「石田ァァアァ!!」
声と共に、襖が外れる勢いで開いた。低血圧な三成の頭は、そこまで覚醒していない。目つきだけがいつも以上に険悪だ。とても会話ができるような様子ではない三成の代わりに、左近がくのいちを落ち着けようと腰を上げる。
「ああもう、石田でも島でもいいから!あいつ!あの風魔のどうにかして!!」
風魔?と三成の頬がぴくりと痙攣した。小田原の戦では面倒な目に遭わせてくれた張本人だ。
「あいつ、もう幸村様が放任主義なのをいいことに、好き放題なの!いくら温厚で優しくて、それはそれは菩薩のようなあたしでも、堪忍袋の緒が切れるっつーの!」
わふ、と犬の声。それはどこからともなく現われて、くのいちの頭に乗った。ええい鬱陶しい!とくのいちは苦無で応戦するが、訓練された忍犬は軽々と避けてしまう。

幸村の部屋は、それはそれは犬で溢れていた。その輪の中心にいるのは風魔小太郎だ。
「くぅおら!風魔!この犬どっか追っ払いなさいよ!!折角あたしたちが幸村様の為に毎日毎日綺麗にしてるのに、犬のにおいついちゃうじゃない!」
この世のものとは思えない形相で睨みつけるくのいちに、風魔は視線を一度も向けない。目の前の犬よりも興味がないのだ。ムキー!!とくのいちはその場で足踏みをする。その背後では、幸村の部屋の変わり様にぽかんと眺めるしかない三成と左近。

と、そこへ、訓練を一旦終えて幸村が戻ってきた。幸村は部屋に溢れている犬達をそれはそれは嬉しそうに眺めてから、それ以外の感想が浮かんでいないかのように、とても自然な様子で風魔に近付いた。
「ふん、鍛錬など無意味なことだ。」
「そう言うな、日々の積み重ねが大事なのだ。」
そこで幸村は、くのいちと、その背後の二人に気付いたようで、どうしたのですか?と微笑みながら、どうぞ上がってください、と座を勧めた。だが、残念ながら彼らが座れる場所がない。それほどまでに、犬が溢れているのだ。
「風魔、少し犬が多すぎるようだ。これでは客人をもてなすことができん。庭に移動させてはもらえないだろうか。」
風魔はさも興味がなさそうに幸村に視線を向けながらも、仕方がない、と笛を吹いた。みるみるうちに犬が庭へと移動していく。その様を見る幸村が、流石は風魔だ!と褒めるものだから、くのいちはこめかみくっきりと浮かんでいる血管に込められた怒りの行き場を失ってしまった。ええい!石田も島も役立たずめ!そう言う代わりに、少々強い力で島のみぞおちに肘で小突いたのだが、当の二人は目の前の様子を間抜けな顔で見つめているのだった。





***
くのいちメインな話じゃねぇ?
でもって、私の風魔のイメージはなんかズレてると思いました。
06/07/02






























Bow wow!!


空気を裂く鋭い音に、舞っていた影たちは動きを止めた。中心に未だ殺気を放っている影が構えをとくと、囲っている影たちも得物をおさめる。しばし、睨み合い。互いが動けず、じっとじっと、相手を睨みつける。

「風魔!」

その膠着を解くように、幸村の声が沈黙に響く。風魔はつまらなさそうに幸村へと視線をやった。

「風魔。私に勝負を挑むのは構わない。いつでも仕掛けてくれていい。だが、だが、風魔。私の大切な忍びを傷付けるのだけは、許可できない。」

風魔は噛み付くように幸村へと手を伸ばし、ふんと鼻を鳴らして幸村から離れていった。





***
真田の忍びと幸村は両思い。どっちかっていうと、
忍び→→(超えることのできない壁)→←←幸村、な感じ。忍びが一人増えると、二倍三倍になるんじゃなくって、二乗三乗になる、って風幸じゃねぇ!
06/07/02