2006年総決算。にはならなかったけれども!


さなだゆきむら

さ…三等分 ダテサナ
な…納豆嫌いって本当ですか。 学パラ 三幸寄り
だ…ダンボールの中身 学パラ 武幸
ゆ…ゆ、ゆうじんです。 兼幸
き…きらきらとかがやく 左近と幸村
む…むじるし くのいち
ら…ララバイ 幸村






























三等分


ねねはあの三成に友人と呼べる人間が出来たことに、ただ純粋に喜んでいた。だからなのだろう、団子や饅頭といったものを三成に配っては、友達と仲良く分けるんだよ!と去り際に三成の背中を叩いていく。普通に迷惑です!とその背に叫ぶ三成だが、それを照れ隠しだとしか思っていないねねは、はいはい幸ちゃんや兼続によろしくね、と笑って流してしまう。

そういった事が何度もあるものだから兼続も幸村も慣れてきたのだろう、仕方がなさそうに、それでもどこか大切そうに包みを持つ三成を見て、二人はどこか楽しげに顔を見合わせるものだ。三成は無造作に二人の前に包みを置き、幸村に開けてくれ、とばかりに視線を向ける。幸村は苦笑しながらも、またおねね様ですか?と訊ねれば、兼続が、まったく過保護なものだな!とさも楽しげに笑うものだ。

包みの中は饅頭だった。確か先日は団子でしたね、ああそうだったな、三成がいらないと駄々をこねたものだから、幸村が二本食べる羽目になった、と笑っている。三成はうるさい!と兼続に怒鳴りつけるのだが、兼続はやはり笑ったままである。三成もこうして怒っているようにも見えるが、他愛ない会話が飛び交うこの空気が好きであった。
饅頭は三つ入っており、三人できれいに三等分出来るようになっていた。縁側で三者三様に寛ぎながら、饅頭に手が伸ばされたその時だった。幸村が立ち上がり、彼の名を呼んだ。

「政宗殿。」

丁度垣根を挟んだ向こう側に、政宗が居たのだ。おそらく所用で秀吉に面談していたのだろう。政宗は幸村の声に気付き、機嫌が良いのだろう、幸村ではないか、と表情を和らげたが、幸村の両隣に居る存在に気付いて、途端に表情を険しくさせた。幸村はそんな彼の変貌が楽しくて、こっそりと笑ったのだが、正面に居た政宗にだけは見つかってしまった。まったく意地の悪い男じゃ、と政宗が吐き捨てるのを見、幸村はこみ上げてくる笑いを押さえるのに必死だった。
「政宗殿、政宗殿もご一緒にどうですか?おねね様に頂いたものですが、」
「わしは甘いものは好かん。」
「しかし、三成殿の好みをよく知っているおねね様のことです、そんなに甘いものではないと思いますが。」
「いや、わしはいらん。」
「政宗公もああ言っているのだ、これは我らで頂こう。」
「そうだぞ幸村。おねね様は俺達三人で、と…」
「遠慮なさっているのですか?少ないかもしれませんが、私の饅頭を半分差し上げますので、ご一緒しませんか?」
もしこの場に居るのが幸村だけだったのであれば、政宗はどんなに忙しい仕事があったとしても、幸村を優先させただろう。しかし幸村の隣りには、政宗が天敵と思っている男が居るのだ。
「幸村!無理に誘う必要はあるまい。」
「そうだぞ幸村。伊達殿はさぞやご多忙であろうからな。」
「しかし休息というのは必要だと思います。」
幸村がじっと政宗を見つめる。政宗は幸村の目に弱い。惚れた弱みとはまさにこのことだろう、と政宗も思うのだが、どうも逆らえない。そうしてじっと見つめられながら、どうでしょうか政宗殿?と訊ねられでもしたら、うむと頷くしかないではないか。政宗はどこか己の無力さをのろいながら、
「幸村がそうも言うのじゃ、貰ってやるわ。」
と返してしまったのだった。

「では、私のを半分…、」
「待て幸村、お前の分だけを減らすのは義に反する。ここは我ら三人から同じ量だけ奴にやればよい。」
「流石は兼続殿!」
「しかしそうすれば、俺達は三分の二、この男だけ一個分を食べることになるぞ。」
三成は饅頭に執着がないのだが、そういった不平等さが気になる性質である。ああそうなってしまいますね、よいではありませんか、等と幸村は思うのだが、三成はどうもそういったことが見逃せないタイプであった。
「よいではないか三成。」
兼続が真っ先に手にしている饅頭から、三分の一をちぎった。
「伊達政宗公はこれからが成長期だろう。たんと食べて大きくなってくだされ。」
ぷるぷると政宗の手が震え、ええいこの義馬鹿めが!幸村の手前押さえておったが、大概にしろ!と怒鳴り散らし、三成をも巻き込んで取っ組み合いの喧嘩になった。しかしその横で幸村は、ふふ、ふふふと笑いながら、三分の二になってしまった饅頭をさもおいしそうに頬張っていたのだった。





***
明るいダテサナを書こうとすると、どうしても義トリオを混ぜないと気がすまないみたい。
06/12/31






























納豆嫌いって本当ですか。





※突然にパラレルです。学園もの。たいした設定もないですが、とりあえず三成と兼続は幸村の一個上の先輩です。


幸村は急いで屋上へと続く階段を登っていた。二段三段飛ばし等は普段はしないのだが、約束の時間がとうに過ぎていたこともあり、幸村に無意識の行動をとらせていた。
(ああしまった、あそこで先生に質問するのではなかった。)
授業中どうしても気になってしまったところを、授業が終わってから先生に質問をしたのだが、幸村の聞き上手なところが災いし、関係のないところまでもご教授いただいてしまった。昼休みが十分潰れてしまった。幸村は机の上の教科書をそのままに、急いで弁当を引っつかんで屋上へと向かった。

屋上の扉を少々乱暴に開けると、そこには不機嫌そうな三成と、ああ珍しいこともあるものだ、といつもと変わらない、どこか呆けた笑顔を浮かべている兼続が居た。他にも慶次や左近等、いつものメンバーが既に揃っていた。

「す、すいません、遅れてしまって、」
幸村は肩で息をしながら、とりあえず謝罪をする。三成は気にしていない、と返答をするものの、不機嫌さが顔どころかオーラにまでにじみ出ている。幸村は申し訳ない思いでいっぱいになるのだが、そんな三成の様子も気にしない兼続が大声で笑いながら言った。
「三成はお前と一緒に昼食を取るのを楽しみにしていたからな。よもや宮本や信幸殿に途中で掻っ攫われたのではないか、と危惧していたのだよ。」
「はぁ、誘われはしたのですが、先約がありますので断って参りましたが…?」
幸村の言葉にまた笑って、よかったなあ三成!先に約束をしておいて!と購買のパンをかじっている三成の背中を思い切り叩いたのだった。

開け放たれた屋上であるはずが、どこからともなく異臭が漂ってきた。三成は思わずパンを口に運んでいる手を止めて、辺りの様子を伺った。丁度幸村が白いご飯の上に、持参したふりかけをかけているところで、目が合った。幸村がにこりと微笑んだものだから、三成もにおいのことなど半ば吹っ飛んだのだが。
「幸村、そのものすごいにおいを撒き散らしているふりかけは何だ?」
と兼続が問う。幸村はえ?と首を傾げてから、ああ、と納得する部分があったのだろうか。お徳用と書かれたふりかけのパックの部分を閉じて、皆に見えるように持ち上げた。
「納豆ふりかけですが、あ、やはりにおいますか?」
幸村と反対側に居る左近や慶次はいいや、全然と首を振るのだが、隣りにいる兼続にはそのにおいがしっかりと届いたらしい。幸村から三成に向かって吹いている風のせいで、三成には兼続以上にそのにおいが伝わっていた。
「流石に学校まで納豆を持ってくるのはどうかと義姉上に指摘されましたので。」
「幸村は納豆が好きなのかい?」
はい!と幸村が元気よく返事をした。三成は正直言って納豆が嫌いであった。においしかり、ねばりしかり。納豆が持つ特徴全てが嫌いであった。
「一日の食事のうち、一回は食卓に並びます!」
その日から三成は密かに納豆克服を目指したとかそうでないとか。
ちなみに、一度だけ納豆を持ってきた幸村だが、一所懸命に納豆をねっている姿を見ても武蔵だけは動揺せず、にかりと笑いながら、納豆ってうまいよな!と納豆談義に花を咲かせていたのだった。





***
納豆っておいしいですよね!日本の良き文化だと思います。みっちゃんはこういった食べ物が駄目だと思うな、という妄想。かねっつはゲテモノ料理とか案外好きだと思います。
納豆ふりかけは本当にあります。おいしいですよ、くさいですが。何故か粘りますが。
06/12/31






























ダンボールの中身





※パラレルです。
 上と同じ設定。



「あ。」
と幸村は思わず足を止めた。早く帰らなければ小降りの雨が本降りになってしまう。三成はそう思ったが口にはせず、どうした?と訊ねながら幸村の視線の先を見た。

『拾ってください。』
と書かれたダンボール。
中にはまだ生まれて数ヶ月しか経っていないだろう子猫がみゃーみゃー鳴いていた。雨が降り出してしまっている。まだ小さな猫だ、死んでしまうかもしれない。そう二人は思ったが、中々猫に手は伸びない。幸村の家は信幸が動物アレルギーらしく動物を一切飼う事ができないのだと、以前から話を聞いていた。三成はというと、居候の身だが頼み込めばねねも秀吉も反対しないだろうことは分かっていた。何分、三成は小動物に分類されるものが好きであった。顔に似合わず、とは己でも思っているのだが、猫などは特別に好きであった。しかしどうも片思いというのは人間だけに言えたものではないらしく、三成がどんなに可愛いなあ触りたいなあと思っていても、猫の方がおびえて逃げてしまうのだ。そういった幼少時代を送った三成は、一種の動物恐怖症のようなものを抱えており、また拒絶されるのでは、と内心びくびくしているのだ。

「三成殿、」
幸村がまるで自分のことのように悲しそうな声で、三成の名を呼んだ。ああなんだ幸村。お前がそんなに悲しそうな声を出すのなら、俺が引き取ってやるぞ。とは、中々に言い出せないものだ。
「どなたか飼ってくださる方を見つけませんか…?」
ああ飼ってやるとも、お前と一緒に!と思ったが、やはり口には出せない顔にも出ない。ああそうだな、と無愛想な声ばかりが僅かに振り出した雨音に混じる。

通り過ぎる人々に訊ねてまわるも、中々気の良い人間など居たものではない。雨は段々と降り出し、気温も下がってきた。空も天気のせいですっかり暗くなってしまった。ああこのままではどうしよう。と幸村がダンボールの中の子猫に視線を向けた。寂しそうな悲しそうな表情に、三成が意を決した。
「幸村、その猫だが、」
「あー幸村!それに会長サンも!こんなところでどうしたんだ?」
三成の声を塗りつぶす大音声だった。幸村は顔を上げて、ああ武蔵!と手を上げた。三成の決意など知らない幸村は、これこれこういうことだ、と武蔵に説明を始めた。最後は困っているのだ、としゅんと表情を落ち込ませた幸村に、だから俺が飼ってやるからさっさとその男とは別れろ!と思うのだが、やはり口を飛び出すはずがない。
「そういうことなら、俺が貰ってやるよ!」
「いいのか武蔵!」
「もう何匹も居るしな。一匹ぐらい増えても変わんねぇだろ。」
流石は武蔵だ!と幸村のきらきらとした表情が武蔵に注がれて、何だよあんまり褒めるなよ、と武蔵が頬を掻いている。ああ、ああ。その幸村の眼差しは自分に注がれるはずだったのに…と思うと三成はこの男の仕種一つとてどうしようもなくにくらしく映るのだった。





***
武幸なのか三幸なのか、迷うところ。
06/12/31































ゆ、ゆうじんです。


「幸村。お前は三成が我らをどう他人に紹介するのか、見たことがあるか?」
いえ、と幸村は茶を啜りながら返答をした。兼続は楽しくて楽しくて仕方がないのだろう、くすくすと笑いながら、それがなあと寝転がっている体勢からごろりと転がり、顔を上げて幸村を見た。行儀が悪い、と三成が居たのであればそう怒っただろうが、幸村はそういったことを大して気にとめる性質ではなかった。ただ寝転がっている体勢にも関わらず、幸村が淹れた茶を飲もうとするものだから、少しばかり零れてしまっていた。畳を気にするわけではなかったが、その僅かに零れた茶を、もったいないなあと思うのである。
「友人だと言っていたよ。あの男は。仲間外れにしてしまったのに、あの男は。ああ、ああ。」
こんなに楽しいことはない、と兼続は笑った。幸村は何がそんなに楽しいのか理解できなかったが、兼続があまりに意地悪なことだけは分かったから、茶が零れてしまった畳を拭きながら、
「意気地の悪いことで。」
と兼続の手にしている湯のみを取り上げて言った。兼続は突然に手の中のものがとられてしまって不満なのか、急に起き上がって幸村が何事かを言う前に、再び湯のみを取り返した。ついでに掠め取るような接吻をしていった。

「お前は私のことをどう他人に紹介してくれるだろうなあ?」
ああ本当に意気地の悪いお方。幸村はそう思ったが口には出さないでおいた。言ったからとしても、彼の機嫌が悪くなることはないと分かっていたが、何となく言うのを躊躇ってしまった。
幸村は再びごろりと寝転がった兼続に、報復とばかりに覆い被さり、ほとんど空になった湯のみを、再度奪取した。あ、と兼続が気のない声を発した。幸村はいい気味だ、と思っている自分を嫌悪しながらも、開いている障子の隙間から庭に向かって、兼続専用となってしまった湯のみを捨てた。地面に落ちて砕けた音が響いた。
「もちろん、友人だと紹介致しますが。」
兼続は声を立てて笑った。それはいい!と腹を抱えている。幸村は兼続の笑いのツボが分からなかったが、彼の機嫌がこれ以上ない程に良いことを悟って、自然と笑顔がこぼれた。その、気の抜いた瞬間に、今度は深く唇を奪われた。
「では私も、友人だと言って紹介するとしよう。」





***
兼幸。ですよね、きっとおそらく。
みっちゃんが優遇されてる話が一個もないことに気付く。ご、ごめ…。
06/12/31






























きらきらとかがやく


綺麗ですね、と幸村の穏やかな声がした。左近は幸村の覗く先を見たが、別段綺麗な風景でもなかった。平凡な城下の様子であった。

「いつか。いつかこの風景を懐かしむ時が来ましょう。いつかいつか、この日見た景色がどれほど輝いていたのかを、深く深く知る時が来ましょう。」
そんな日が来ないことを祈ってますが。きっときっと、それは辛くて悲しくて苦しいことなのでしょう。幸村はそして笑った。笑うことしか知らぬ男なのだと、左近は思っている。苦しい悲しいという感情を知っていても、表現する方法を知らない男なのだと、左近は思っている。それを左近は悲しいことだと思った。思ったが、幸村には何一つやってやろうとは思わなかった。幸村と左近は、共有できる過去を持っていながら、どこまでも他人を貫いてきたからだ。

「私は左近殿が羨ましく思います。」
「羨ましがられるような、立派な人生なんて歩んできてはいませんよ。」
しかし幸村は笑いながら、あなたがとても羨ましいのですよ、と穏やかな表情で左近を見た。
「あなたはきっと、関ヶ原で死んでしまうのでしょう。三成殿の為に、あなたはそうやって、」
やめてくれ、とは言えなかった。正にその通りだったからだ。左近は既に戦を諦めていた。何の為に石田の兵を鍛えたのか、鉄砲を集め戦の準備をし、それは何の為なのか。ひとえに、ただ華々しく散る為ではないだろうか。そう思うと、無性に殿に申し訳なく感じた。あの御仁はまだ己の、いや西軍の勝利を信じているのだ。立派な裏切り行為だなとは思ったが、言葉には出来なかった。それこそが一番の裏切りに感じられたからだ。

「左近殿。」

幸村がただ真っ直ぐに左近を見た。幸村が本当に見つめているのは、左近を通して視る死の世界ではないだろうか。

「あなたが羨ましいです。三成殿の為に堂々と死んでいけるあなたが、とても羨ましいのです。」

左近は幸村の頭に手を置いた。武田軍に居た頃は何かと頭を撫でていたりもしたが、今となっては遠い昔のことだった。互いに、成長してしまった。幸村がわがままを言う歳ではなくなってしまったのと同じく、左近も幸村のわがままを叶えてやることができなくなっていた。

「悪いが、こればっかりは譲れなくってねぇ。」





***
左幸が書きたかったのに、なんてこったい!
あと二つなのに、時間が…!
06/12/31






























むじるし


「ねえ幸村様。あたしは生きることを知らずに生きてきたの。幸村様がね、教えてくれたの。それなのに、幸村様は生きることをすぐに捨てたがる。ねえ、ねえ。ひどい話だよ、ねえねえ。幸村様が本当に大切だったの、本当に幸村様しかいらなかったの、他のものなんて何も目にはいらなかったし必要なかったし。ねぇ。」
くのいちはそう言って、幸村の頬を撫でた。冷たくなってはいたが、まだ弾力を残していた。雨に打たれたせいだろう、暖を取れば次第に温かくなるはずだ。
「ねえ、ねえったら。」
くのいちが幸村の身体を揺らすが、よほど疲れているのだろうか、中々目を覚まさない。流石のくのいちも不安になり、ぎゅっと幸村の抱き付いた。汗と雨のにおいが交じり、決して良い匂いとは言えなかった。それでもくのいちはぎゅうぎゅうと幸村を締め付けた。くのいちの耳元に幸村の吐息がかかった。生きるってどういうこと?くのいちはそう幸村に問い掛けてやりたかったが、この胸の苦しみが生きるということなら、今のこの瞬間だけは、こんな苦しみを抱えるぐらいなら死んでしまいたいと思った。

「ねえねえ、生きて、生きて、大切な人。」





***
死ネタにしようとして、ぼかした感じ。多分幸村が爆睡してるだけだよ。ってことにしてください。
06/12/31






























ララバイ


『おやすみおやすみ愛しいお人。』


そう歌うように呟き、幸村は花びらを散らした。


『もう逢えぬ愛しいお人よ。
 もう声も聴けぬ愛しいお人よ。
 もう笑顔も見えぬ愛しいお人よ。
 もう忘れてしまった愛しいお人よ。』


『おやすみおやすみ、さようなら。』




***
これにて終幕。
07/01/01