誰かと幸村の話。
たぬき<5/31> /
阿国さん<5/31> /
くの子<6/1> /
...(続くかは未定)
拝啓、
幸村は、届けられた書に眼を通すと、にこにこと笑いながら、読み終えたばかりの書を武蔵に差し出した。武蔵は促されるままに文面を追っていく。途端に表情は険しくなったが、幸村は武蔵の様子にもにこにこと笑っていた。
「幸村、これは――、」
五十万石で召し抱えよう、と家康は文面で言っている。武蔵は幸村の表情を伺う。幸村はやはりにこにこと笑いながら、まだ武蔵が読み終えていない書をひょいとつまんで、びりびりと破り捨ててしまった。それは紙ふぶきとでも言うかのように細かく、粉雪ほどの小ささに。幸村は形状をとどめていない書を景気よく庭に散らしながら(さながらその様子は雪を降らせているようだった)、にこにこと言った。
「私は家康が大嫌いなんですよ。」
ほのぼのとした、春の陽気だった。
(何度もこういった書が届く。まったく、困ったものだ。)
(な、何度も?)
(返書を出すのも面倒だったから、そのままにしておいたのが、まずかったのかもしれない。)
(…。)
***
記念すべき一回目のくじ引き大会が『たぬき』でした。Gattem!
幸村は家康に対してのみ黒いといいな。私的幸村は、家康が本能的に嫌いです。
「真田幸村様どすか?」
幸村はぼんやりと庭を眺めていたものだから、突然の声に縁側から転げ落ちるのではないか、と思うぐらいに驚いた。え、あっはい、そうですっ うろたえながら声が聞こえた方へと顔を向けると、そこには先日戦場で舞を舞っていた女性が、開いた傘を肩に乗せて佇んでいた。目が合うと阿国はにこりと微笑んだ。幸村は思わず姿勢を正す。
「そない警戒せんといておくれやす。うちはただ慶次様を探しに来ただけどす。」
「慶次殿は、こちらにはいらっしゃいませんが?」
「いけずやわ〜。追い返さんでもええのに。」
「そのようなつもりは、」
すると阿国は傘をたたんで、幸村のそばに寄った。思わず身体をそらした幸村に、逃げるなんてひどいわぁ〜と、芝居掛かった様子で泣く振りをするものだから、幸村は動けなくなってしまった。その様子に満足した阿国は更に幸村に近付き、顔をずいと近付けてまじまじと幸村を眺めた。居心地の悪い視線に、幸村は身動き一つできない。
「あんさん、ほんにあの幸村様どすか?戦場の凛々しさはどこいってしもうたんやろか。」
「はぁ。」
すいません、と幸村は言ったが、何故自分が謝っているのか幸村自身わからなかった。その様子に阿国もため息をついて、がっかりやわ〜と肩を落とした。
「でも、うちは優しい幸村様も好きどす。戦は一時の華やわ〜、人の一生も華とそう変わりおまへん。戦場での幸村様は、すぐに散ってしまいそうで、うちは見てられへんわ。華は好きやけど、あまりに悲しゅうおすわ。だから、ちょっと腑抜けな幸村様も好きどす。」
今度出雲においでやす〜。阿国はそう言うとひらりと身を翻して 慶次さまぁ〜どこにおるん? とふらふらと歩き出していた。
***
阿国さんの口調が分からないヨ。関西弁とか、なんかいろんなものがごっちゃになってる気がする。
えっと、次はくの子です。
いとしいひと Air.様
天気は良好、風よし気温よし。そんでもって、幸村様の笑顔の調子も上々。
頬杖をついて下の様子を眺めていたくのいちは、無意識のうちに幸村を目で追っていたことに、少しの喜びと多大なる呆れを自身に感じていた。幸村は庭先で、三成・兼続と共になにやら談笑している。
(あの人の隣はあたしの場所だったのに。)
(あの笑顔はあたししか知らなかったのに。)
もやもやとした想いを抱えて空を見上げると、それはくのいちの心情とは全く相容れない見事な青色をしていた。はぁ、とため息。
「くのいち。そこにいるだろう、くのいち。」
木の下で幸村が呼んでいた。ありゃりゃ、ばれてたの、とくのいちは木から飛び降りた。
「三成殿から頂いたのだ、お主も好きだろう。」
そう言って団子を見せる。馬鹿みたい。くのいちは思う。この団子はそもそも三成が秀吉から貰ったもので、それを更にあの三人で分けたのだ。三本あったものが、幸村の手にまで回ったことで、一本になっている。まったく、一串しかない団子をどうやって二人で分けるのか。
「幸村様だって好きなんでしょ。一人で食べればいいのに。」
遠慮するくのいちを、さも意外そうに見た幸村。くのいちは思わずむっとするものの、常日頃の行いを思えばそれも当然か、と自分でも思う。
「女性は皆甘いものが好きだと聞いていたんだがな。」
「女の子は甘いものが好きですけどね、あたしは忍びなんですよ。」
「だから、女だろう、お前は。」
何を当然のことを、と笑った幸村に、この人あたしの性別ちゃんと知ってたんだ、と的外れなことを思わずにはいられなかったくのいちだった。
***
くのいちの口調ってどんなんだっけ?
私普通にくのいち好きです。今更だけど、2で使えなくなってしまったことが寂しいです。