『覆 関ヶ原』で結城秀康×真田幸村妄想です。
間違えたわ!って方はバックプリーズ!





この日も当然のように、いつもの四人が集まれば酒宴となった。真田幸村、本多正信はやはりしぶい顔をしたが、結城秀康、呂宋助左衛門は構わず酒を仰ぐ。

そうして長いこと酒を飲んでいたが、秀康は酔った素振りすら見せず文字通り浴びるように酒を飲んでいた。既にその輪の中から逃れている正信は、顔を真っ赤にしながら、目の前の破天荒な関白どのに呆れつつも、半ば微笑ましげにその様を眺めている。正信の隣りでは、秀康にすすめられるまま抵抗空しく酒を飲まされてしまった幸村が、こくりこくりと舟を漕いでいた。天下の軍師様である。ここしばらくは戦続きであったから疲れがたまっていたのだろう。幸村は諜報から物資の確保、人員の配置までを一手に担っている。秀康の信頼が現れていた。頼りになる軍師様も、酒の酔えば子供と変わらない。柔和な笑みを絶やさぬ顔も今は赤く染まり、瞼も閉じられていた。その顔の、存外に幼いこと。この男が戦においては毎回奇策を思いつくのかと思えば、恐ろしくもあり、反面面白くもあった。

どれ掛け物を、と老婆心から幸村の肩に手を乗せる。その時、ついに本格的に寝入ってしまった幸村の身体が正信の方へと傾いてきた。起こそうかとも思ったが、まずこのような場で寝入ってしまうような人物ではないことを思い出し、それ程までに疲れていたのか、とついつい過保護になってしまう。これが秀康だったなら正信も支えられないが、小柄な幸村であったのも良かったのだろう。

「あっ、幸村殿は寝てしまわれたか。」
秀康である。今も酒で満たされた杯を片手に幸村の顔を覗き込む。あまりの酒臭さに正信は思わず顔を顰めた。
「余程疲れていたのでしょうな。起こすのも気の毒。秀康様はあちらで助左衛門と仲良うやっていなされ。」
「ふむ、残念だが、そうするか。しかし、幸村殿も人が悪い。何も本多のジジイ殿に寄りかかる必要はなかろうに。俺はいつだって幸村殿を受け止めてやるぞ。」
「それは幸村様が身の危険を感じたせいではありませぬか?」
秀康につられて、助左衛門も顔を覗かせる。助左衛門のくせに生意気なことを申すな、と秀康が口を尖らせれば、助左衛門は日頃いびられている仕返しとばかりに、にやりと笑みを作った。
「先日、幸村様の尻を撫でておられましたな。流石の幸村様もそれはもうびっくりしてみえましたぞ。そのような不埒な秀康様に寄り掛かってもみなされ、何をされるか分かったものではありませぬ。」
何だ、お前見ていたのか、と大して動揺もなく秀康は言ってのけた。
「目の前に触り心地の良さそうな桃があったまでだ。そなたならば分かるだろう?」
「まあ、そちらの趣味はありませんから、何とも返答に困りますな。」
「馬鹿、俺だってないぞ。幸村殿は特別じゃ。」
秀康の言葉を楽しんでいた助左衛門だったが、その返答にああまたか、とあきれてしまった。正信はそのやり取りを眺めながら、この人の苦労はまだまだこの先も続きそうだ、と密かにため息をついた。当の本人は、未だ眠りの中だった。





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ホント、冗談抜きでこれぐらい仲良しな首脳陣なんですよ!もちろん、尻撫でる設定はありませんが(当たり前だ!)
作中では秀康が関白になるので、その設定を引用。酒好きもそのまま。幸村と正信が下戸なのもそのまま。ちなみに本多正信は、家康の重臣でしたが、早い段階から秀康に賛同してます。息子さんは家康についてますが。
作品の時間軸としては、関ヶ原の戦後、大坂の陣が始まる前に秀康が挙兵してその辺りから話が始まります。秀康×幸村で妄想したい方(普通いないよ)には是非ともおすすめ。


補足:助左衛門は商人で、主に軍備を担当してます。海外の事情にも詳しい。けど、戦の知識は全然ないので、軍議の度に的外れなことを言って秀康にからかわれてます。
10/14