救世五題 行き止まり様
01 理由を言い訳にして悲劇の英雄気取りか 兼続と政宗
02 糖分で世界を救う
03 微かな名残で翼は空を失う
04 おかえりと言ってあげたら
05 最後に約束をひとつ、果たしたい
01 理由を言い訳にして悲劇の英雄気取りか
かさりかさりと、紙の擦れる音が何度も鼓膜を震わす。部屋の中央では、紙束の海に男が一人溺れていた。政宗は足元に広がる紙束の海に手を入れ、その一部を掴み上げた。端正な字は、時に歪みうねりながら、その紙一面に広がっていた。『徳川殿の行い、甚だ以って不義そのものである。主家を重んじることを忘れ、それでよくも武士が名乗れたものだ。我々の行いに意見を述べるのであれば、まず己の行いを振り返ってはいかがか。』政宗はため息を吐き、紙片を捨てた。これは直江状の一部だろう。この男が一番の栄華を極めた、いいや違う、この男が何も恐れるものがなく、己の傲慢をただ真っ直ぐに突き進むことができた頃の、あまりにも儚い記憶の一片だ。
「あの子には、悪いことをしてしまった。」
己の驕慢に溺れる男は、絞り出すように言った。直江兼続は感情の揺れ幅が大きい男だ。政宗は興味がなさそうに兼続を一瞥した。過去の強欲に沈むなど、あまりにも息苦しいことだ。ぜいぜいと息を吐きながら、この男はどうやってこの先を生きるというのだろう。
「あの子は全て分かっていただろうに。我らが引き摺り込んでしまった。あわれな、あわれな子だ。あの子はこの先、どうやって生きるのだろう。私を恨みながら、三成を慕いながら生きるのだろうか。いいや違う。あの子の心はとっくに空っぽだ。心に穴が空いてしまっている。注がれるものが、注いだそばから漏れ出して、あの子の心に満ちることはないだろうに。」
「貴様はいつまで経っても傲慢じゃの。あやつがそなたらを選んだのは、間違いなくあやつの意思であろうに。あやつは、徳川でもなくわしでもなく、豊臣でもなく、貴様らを選んだのじゃ。あやつの信奉する、あまりにも愚かな美学の先に、貴様らがおっただけの話じゃがな。」
兼続が、何を知った風に、と政宗を睨みつけた。政宗はむしろ、何をその眼で見ていたのだと怒鳴りつけてやりたかった。
***
オチが喪失した(お前…!)
あ、直江状の内容は捏造してます。ウィキさんに書いてなかったから、作っちゃえばいいかな☆と思いまして(ひどい) 歴史群像参考にしたかったけど、今近くにないから早々に諦めました(…)
10/20