「少し付き合わぬか?」
 と、出会い頭に訊かれ、幸村は頷きながら、ああまたか、と苦笑した。宗茂とは正反対とも言える性格だが、何故だか二人は仲が良い。今日も宗茂に誘われて、幸村はその隣りに立ち、とある甘味屋へと足を向けている。
「また、立花どのと喧嘩でもされたので?」
「またとはなんだ、人聞きの悪い。ただ戯れに、ァ千代は花も茶道も着物の柄も趣味が悪いな、とてんごうを言っただけだ」
 幸村は予想と違わぬ返答にまた苦笑して、いつか愛想つかされますよ、と一応の忠告をしたのだが、それには及ばぬ、との返答に口を噤んだ。この自信家で傲岸な様は見ていて楽しいのだが、被害者のことを思えば、笑い飛ばすには少々気の毒に思えたからだ。

 行き着け、と言う程ではないが、顔を覚えてもらえる程度には通い詰めている甘味屋である。いつも買うものが決まっている宗茂が、いつものを、と言えば、店主も心得たものでいつもの甘味をいつもの分だけ包装してくれる。反対に、幸村はその日の気分や季節ものを好む。今日は新作として展示されている甘味を指さして、三つに分けて包んでくれるよう注文している。そもそも、宗茂の手にある甘味は、ァ千代への機嫌取りでしかなく、甘いものが苦手を通り越して嫌いな宗茂は、本当ならばこんな甘ったるいにおいの充満した店など来たくはないのだ。早々に目的を達した宗茂は、さっさと店を出ようとする。幸村も慌てて商品を受け取って、宗茂の後を追い掛けた。
「お茶でも飲んで行けば良いものを」
 と、幸村は隣りに並びながら声をかけたものの、宗茂は必要ない、の一点張りだ。宗茂の反応に慣れている幸村は、それ以上は言わず、では急ぎましょうか、と歩を早めた。

 結局、甘味を買う為だけに付き合った幸村は、別れ際、持っていた三つの包みの内一つを宗茂に手渡した。必要ない、と拒もうとする宗茂の手に強引に握らせて、
「いつも同じものでは、流石の女子も飽きてしまいますよ」
 わたしが買ったというのは内緒です、と言うものだから、宗茂は、ふむあれにもそういう機微はあるのか、とまたまた失礼なことを言い残して、屋敷へと戻って行ったのだった。





 その二人のやり取りを眺めていた甲斐姫とくのいちは、二人同時にため息をついた。あまりにぴったりだったものだから、二人は顔を見合わせて笑い合ったが、それもつかの間、再び重い重いため息を吐き出した。
「二人揃うと、何ていうか眼の保養よねぇ。いいなぁ」
「あんなに見つめちゃって、はしたないよ、お姫さま。幸村様はあたしの気配に気付いてたし、あの男も絶ッ対わかってたね。人の視線に敏感そうだし」
「げ、マジ?」
「マジよマジ、大マジ。あーそれにしたって、こりゃまた厄介な男につかまっちゃったって感じ」
 くのいちが両手を広げて大袈裟に肩を落とすと、誰が?と甲斐が訊ねた。
「幸村様よ、幸村様!あーんな性質の悪い男に気に入られなくたって!幸村様も現状楽しんじゃってるしね。ほんと、やってらんないわ」





***
とりあえず、詰め込んでみました。こんな関係だったら、私はすごく楽しい。
この後、宗茂さんが故意に、これ幸村からねってお土産渡してまた一悶着あります。幸村さんが大好きな立花夫婦。ただ、今のところ、新密度は宗茂さんの方が高いです。まだ立花どの・真田呼びの仲なぎんちゃんに比べて、宗茂どの・幸村呼びな宗茂さん。彼は手が早そう。ただ、宗茂さんと幸村はただのお友達なので大丈夫です。きっと。この二人並んでる様は、普通に見ものだと思います。ます。
あ、宗茂さんが甘いの嫌いっていうのは偏見です。出来れば、極度の辛党であって欲しい。あ、幸村が三つ買ったのは、一個はぎんちゃんにあげる為で、一個は自分用、あともう一個はくのいちにあげて、甲斐姫とわけわけしてねってことです。中にねじ込めなかった!
09/12/14