真田幸村と戦場を共に駆けたことのある者は、幸村のことを炎のような男だと言う。戦の非情を体現したような、迷いのない槍さばきで敵を薙ぎ倒していく様は、まるで鬼だ。馬を自在に操り、槍で突き、払い、時には引いて、また攻める。生きた炎のように彼の槍はうねる。地獄の業火を思わせる苛烈な戦は、人に恐怖と歓喜をもたらす。そうして最後にこう締めくくった。戦場で赤を纏った幸村は、身震いするほど美しい、と。


 真田幸村の戦場での姿を知らぬ者は、幸村のことを水のような男だと言う。怒らず驕らず、ただただ静かに佇む幸村は清流のようだ。水面に浮かぶ月を愛でるのは、その水面こそが清廉であるからだろう。けれども、折れることのない芯の強さを彼は有しており、決められた道をひたすらに突き進む一途さと頑なさが好ましい。そして最後にこう言って口を閉ざした。凛と伸ばされた背筋の美しいこと、どれほど見ていても見飽きることはない、と。


 ちなみに、両方の面を知る者は、両者の熱弁にただただ曖昧に微笑むばかりで、どちらを擁立しようともしなかった。





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上から順に、政宗・三成・兼続 です。
10/01/31