後日談。


 一ヶ月余りの逃避行の末、城に戻った二人を出迎えたのは、家臣たちの怒り顔でも心配顔でもなかった。おや、殿、お帰りなさい。幸村も、殿のお守りは大変だったろ?と笑うのは左近で、兼続は兼続で、うむすっきりとした顔をしている。良い休養になったようだな、と二人の肩を叩いて、して土産は?とねだる始末だ。まるで二人の出奔の決意など素知らぬ顔、働きづめの二人は一ヶ月間暇を取っていただけだ、という空気が城に充満している。確かに三成と幸村は各々の位を返上するよう置手紙をしたためたはずなのに、全くそれが受け入れられた形跡がない。

 顔を見合わせて首をひねる二人をよそに、我が策なれり!とほくそ笑む左近、兼続、孫市だった。















  END

10/01/31