三成は初めて聞く幸村の声に呆然とその場に立ち尽くした。掌で顔を覆いながら、幸村は叩きつけるように言葉を紡ぐ。

「どうしてわたしをそっとしておいてくれぬのです どうしてわたしの醜さを露見させてしまうのです 何が楽しいのですか せめてあなたの中のわたしはきれいなままでいさせてください あなたがそうやってわたしに優しくしてくださる度に わたしがどれだけみじめな想いをしているのか あなたは何もわかっていらっしゃらない 隣りに立つことを望んでなどいません あなたの特別になりたいなどと そんな恐れ多いことを考えたことすらありません ただただ遠目からあなたを眺め あなたが日々を無事に暮らしていらっしゃる その事実をこの眼で確かめることさえできれば わたしはあなたとの距離に苦悩したりしません 綺麗な綺麗なあなた 清廉潔白を身に纏ったあなた わたしは ただ あなたがそこに存在していてくだされば それで満足なんです」

 ようやく言葉が切れたところだ。三成は何か言葉をかけなければ、とゆるゆると手を伸ばした。けれど下を向いていた幸村がこちらを見、キッと三成を睨みつけたせいで、その動きを止まってしまった。あまりにも切実に、苦しいと呻いている気がして、三成は手を差し出すことが出来なかったのだ。

「それなのに それなのにあなたという人は 一時の興味だけでわたしの許を訪ねてみたり 土産に団子など買ってきたり 廊下ですれ違い様に声を掛けてくださったり わたしがどれだけみじめな想いをしているのか ちっとも知りもせずに わたしに微笑みかけてくださって わたしはくるしくて くるしくて しかたがありません」

「もう もう わたしにかまうのは やめてください」

 幸村はそう叫ぶように言い、そうして再び顔を伏せた。三成は顔に熱が集中していくのが分かる。生まれてこのかた、こんなにも熱烈な告白を受けたことはない。だってそうだろう、そういうことなのだろう?幸村は、おれのことが好きなのだろう?

「それは聞けぬ」

「ひとでなし です ひどい ひどいことをおっしゃる どれだけわたしをみじめにすれば気がすむのか」

「おれも おまえが 好きだからだ」

「そういう 性質の悪い冗談は 

 その言葉の後に、どんな痛烈な独白が吐き出されるはずだったのだろう。生憎三成は、幸村の身体を強引に抱き締めてしまったから、その先が綴られることはなかった。伊達や酔狂でおまえを抱き寄せるような器用さは持っていない、と囁いたのがよかったのだろうか、幸村が目を見開いて三成を見た。同時に、三成の目からぽろりと涙が零れた。感極まって泣いてしまうなど、格好悪い。幸村は躊躇いがちに三成の目尻に手を伸ばして、溜まっている涙をたどたどしい動作ですくった。


「どうして あなたが 泣くんです」

「お前がただ いとしい からだ」










う ら み ご と


リクエストありがとうございました!リクエストいただいた曲をフルで聴いたのは初めてでした。可愛い声で歌うなぁというのが第一印象でしたが、歌詞は案外声を裏切ってないか?と解釈していく内に思いつつ、今回は曲調よりも歌詞重視に書きました。あまりにも切実に相手を求める歌詞だったので、そんな雰囲気にしてみましたり、えっとなってます?あと、表面よりももう一歩中に踏み込んだ相手の言葉が欲しい、みたいな感じの印象を受けましたので、珍しく幸村が叫ばせてみたり。この二人は薄氷の上を歩くみたいに、儚い危なっかしいイメージなので、そんな綱渡りな雰囲気も出てたらいいなぁとも思ってます。
あ、と、これの話の前振りも一応書いたんですが、あまりにもこの話の雰囲気をぶち壊してるので、一応避難させてみました。何が起きても大丈夫☆でしたら、こちらから飛んでください。あの最初に謝っときます、好き勝手してすいません。
ではでは、リクエストありがとうございました!

09/01/25