結局、あの男はわしのことなど視線の隅にもとどめてはおらなんだ。
あやつが最後に縋ったのは、わしではない。己の半身ではない。
わしはあやつが欲しゅうて欲しゅうて敵わんかったが、手に入れた瞬間から、
あやつはわしの半身であった男ではなくなることを知っておった。
ゆえに、わしはあやつを手に入れようとはせなんだ。
あやつが最後に縋ったは、己の欲を理解せぬ男であったのう。名をなんと言うたか。
みやもと、ああそうじゃ!宮本武蔵という剣豪じゃ。
あやつらしい、不器用な縋り方をしよって。
何せ、何一つ理解し合えぬ、共有し合えぬ男を、
幸村は最後の友に選んでしまったのだからのう。